稚内から紋別までオホーツク海沿いに走るテレビ番組を見てオホーツクの海を見に行きたくなった。
1日目:
高速道路は景色が単調でつまらないので、札幌から国道275号を北上する。次第に交通量が少なくなり、新十津川を過ぎると閑散としてくる。収穫を待つ稲穂が黄金色に輝いている。晴れているかと思うと時々雨雲が通過する、気まぐれな天気である。12時半過ぎ幌加内の道の駅「森と湖の里ほろかない」に到着した。せいわ温泉ルオントもあり、日帰り入浴のお客も多い。

私たちのおめあてはレストラン・そばの里である。幌加内そばは作付面積、生産量とも日本一だという。そばの里では、製粉から製麺まで自社で行い、時間帯によりガラス越しに手打ちの様子を見ることもできる。今回は、中札内地鶏のかしわつけ麺を注文した。もちろんおいしかった。売店でこれまたおいしいそばかりんとうを買う。
道の駅を出て北上すると、あちこちにそばの畑が広がる。そばの花展望台もある。清楚な白がとてもきれいだが、実は匂いは相当に悪い。添牛内から士別市に抜ける。士別は私が中学時代を過ごした町だが、今回は先を急いで通過する。


国道40号を北に向かう。名寄市風連の道の駅「もち米の里☆なよろ」に寄り、通販で何度か食べてお気に入りのソフト大福を買う。カボチャ味、巨峰味、イチゴ味など8種類、おいしいし楽しい。さらに北上する。名寄と美深の間は自動車専用道路を使って時間をかせぐ。まもなく音威子府、その手前から道道220号に入り北見枝幸に向かう。この頃から道北地方は本格的な雨になった。歌登を抜けて北見枝幸に入り、16時過ぎに今日の宿、枝幸温泉・ホテルニュー幸林へ到着した。
枝幸温泉はカルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉で、源泉が45℃以上ある掛け流しである。硫酸塩泉というのは少ないらしい。淡黄色の気持ちのいい温泉だった。日帰り入浴の漁師さんが何人も来ていた。「明日は時化だな」、「ゆっくり休んでや」という会話が聞こえてきた。

夕食は北見枝幸の海のものが食べられるということで楽しみにしていた。枝幸産の毛蟹半身、ホッキ貝の和え物、殻入りのツブの煮物、タコのしゃぶしゃぶ、ホタテとアサリの酒蒸しなど素材は良かったが、味付けの濃いものが多く少々残念であった。
2日目:
昨夜からの雨はあがり晴れ間がのぞいている。朝の温泉はすいていて、ゆったりとした気分になる。ゆっくりと朝食を取ってから、妻が昔来たことがあるという、ホテルからも近いウスタイベ千畳岩へ行く。北オホーツク道立自然公園に指定されており、畳を重ねたかのような岩が連なる海岸である。キャンプ場もあり、全体が整備された公園になっている。私たち以外にも訪れる人がいる。オホーツクの海は寒々とした印象が強かったが、今日は日射しを浴びて明るく濃い青の色を見せてくれた。

美幸線という美深と北見枝幸を結ぶ鉄路の計画があり、美深から仁宇布までは実際に線路が引かれた。当時小学生の私は美深に住んでいた。美深から松浦周太郎という国会議員が誕生し運輸大臣になった。美幸線ができたとき、こんな乗る人もいないところに線路が通るのは運輸大臣の力だと、大人から聞かされて小学生でも知っていた。
すぐに美幸線は日本でも1,2を争う赤字路線となり、仁宇布から先に線路が延びることもなく20年後には廃線となった。音威子府からは天北線が浜頓別を経て稚内まで延び、浜頓別からは興浜北線が北見枝幸まで伸びていたが、天北線も興浜北線もすべて廃線となり今はない。子供の頃から名前を知っていたが北見枝幸がどんな町なのか知らなかった。土曜の朝のひとけのない街中をゆっくりと車で走った。高層の建物は少なく、ゆったりと広がったきれいな町であった。
北見枝幸を出て、オホーツク海に沿って南へ向かう。マリーンアイランド岡島という道の駅があり、地元の特産物などを見て昆布を買う。さらに南下して雄武に入る。この町も昔から名前は知っているが、訪れるのは初めてである。高校の同級生が雄武出身だった。ごく普通の町であるが、この町から来ていたのかと思うと特別の感慨がわく。
さらに南へ、雄武町の沢木へ行く。私が小学生の頃、いくつかの小学校が一緒に士別から国鉄(今のJR北海道)の貸し切り列車を仕立てて、沢木に海水浴に来ていた。士別には海がないので、社会見学を兼ねていたのだろう。岩場で蟹を捕まえたことなどを覚えている。それ以降一度も来たことがないので、どんな海水浴場だったのか見てみたいとずっと思っていた。
国道から沢木の港の方へ降りていくと大きな駐車場とキャンプ場がある。このあたりは日の出岬という地名で、温泉ホテルもあると知った。その先にラ・ルーナという名前の全面ガラス張りの立派な展望台が建っていた。展望台には誰もいなかったが、寒い日でも快適に海の眺めを楽しめそうだ。駐車場の近くに戻ると海岸が見渡せる。強い波は入り込まないような岩場があり、ここが海水浴場なのだろうかと思った。


キャンプ場の管理人さんがいたので聞いてみると、昔の海水浴場は現在の漁港の近くにあり、漁港の拡張で使えなくなったということだった。小学生の頃、士別から海水浴で来たことを話すと、いろいろと教えてくれた。沢木も昔は700人くらいの人口があったが現在はその半分であるとのこと、主産業であった林業が衰退し、農業も厳しくあとを次ぐひとが少ないということだった。ただ、水産業は収入もいいので後継者がいると言っていた。昔の沢木駅の場所も教えてくれた。当然のことながら遙か昔に廃線になっており、現在は線路跡が道路になっていた。
沢木を出て、興部に向かう。興部の道の駅に行くと昔の興部駅の跡地であった。興部駅は旧名寄本線(名寄から紋別を経由して遠軽まで)と興浜南線(興部から雄武)の分岐駅であった。私は士別と旭川や札幌の移動に名寄本線を走っていた「急行なよろ」をよく使っていた。妻は紋別出身だ。紋別と札幌の移動には「急行なよろ」が便利であったに違いない。今は、名寄本線も興浜南線も廃線になってしまった。

道の駅にはディーゼルカーを改装して作られた簡易休憩所&簡易宿泊所が置かれ、予約すると宿泊もできるらしい。
テレビ番組で、興部のノースプレインファームにあるミルクホールのハンバーグとソフトクリームがおいしいと紹介していた。興部から名寄方面に国道239号を少し走った牧場内にミルクホールはあった。お昼時は待つのが当然らしいが、13時を過ぎていたせいかすぐ入ることができた。店内はお客でいっぱいであった。妻はモッツァレラチーズのハンバーグ、私は2種のチーズのハンバーグを注文する。肉がジューシーだがしっかりしており、チーズもおいしかった。そのあと、妻はハスカップ、私は夏イチゴのソースのアイスクリームを食べる。ソースはさっぱりとしておいしく、アイスクリームは濃厚であった。人気店だけのことはある。
妻の実家があった紋別に向かう。途中の渚滑から寄り道して滝上方面に入り、中立牛というところへ行く。妻の母親と、叔母、叔父が一時期住んでいたことがあるというところだ。叔母と叔父が手違いで夜道を鴻之舞まで歩くことになったという土地でもある。以前立ち寄ったときには商店だった建物があり、学校の跡が残っていた。その話をすると叔母は思い出したくもないと言っていた。それは本当だったのだろうか。
もう叔母も叔父も亡くなった。昨年再び中立牛へ行った。しかし、以前見た建物を見つけることはできなかった。あとから、もうちょっと奥まで行けばあったのではないかということが気になっていた。今回行ってみたが、やはり見つけられなかった。短い時間でも、確実に様々なものが変化している。
紋別へ行く。妻の両親を始め親族が眠っているお寺でお参りをしてから、蟹の爪のオブジェを見に行く。

重さ7トン。オホーツクの蒼い空と純白の世界をオブジェで表現したと北海道新聞に紹介されていた。紋別には何度も来ているのに近くで見たことがなかったので、見に来た。結構ひとが来ている。オホーツクの風情がある。海が迫り、オホーツクタワーも近い。

紋別港の近くの出塚水産の本店に行く。今や、新千歳空港にも店を構えるかまぼこの有名店である。一押しの野菜天を揚げてもらって、港の見える2階で食べる。熱々でおいしい。最高である。
今夜の宿泊ホテル・オホーツクパレスに行きゆっくりする。夏に行くと大学生や社会人の陸上チームが合宿しているが、今回は早稲田大学と中央大学の陸上部が合宿していた。エレベーターで学生とコーチらしいひとと一緒になり話をした。私は箱根駅伝のファンであり、毎年正月の2,3日は駅伝漬けである。中でも早稲田大学は子供の頃から「早い大学」と呼んで応援していた。駅伝を見ていると言うと、コーチらしいひとが今年は早稲田と中央の両校で青学に一泡吹かせますと言っていた。
3日目:
オホーツクパレスの朝食は地元のものを取り入れたバイキングであり楽しみだ。ホタテの刺身は貝柱がしっかりと感じられる。ホタテのフライや、サンマの竜田揚げ、地元のかまぼこなどもありうれしくなる。朝ご飯から満足した。
7階の部屋に戻り、見納めかもしれない街並みと港を眺めてからホテルを出た。出塚水産に寄りカマボコのセットを買って揚げてもらい、発泡スチロールの箱に入れてもらう。札幌に帰るまで暖かいかもしれない。紋別でしたいことはすべて終えた。
道道の305号を通って丸瀬布に抜ける。駅伝練習用の距離を示す標識が設置されている。1キロメートルごとに、25キロメートルまであり、そこで引き返すようになっていた。車の通行もほとんどなく走りやすいかもしれないが、熊が出てきてもおかしくない道である。さらに進むと鴻之舞の跡地があるが、今は森の中に埋もれ、ここに1万5千人近い人が住む集落があったとは想像できない。気をつけていると鉱山跡碑と慰霊碑があるくらいである。
丸瀬布の道の駅で一休みする。この先は新鮮な農産物などを買って札幌に帰るだけである。時間の節約で高速道路に入り旭川に出た。トマトがおいしい東旭川の谷口農場でトマトとトウモロコシを買う。道の駅・「田園の里うりゅう」では野菜とお花を買い、ソフトクリームを食べる。たくさんの人が並んでソフトクリームを買い求めていたが確かにおいしかった。最後に、野菜の駅「ふれあいファームしのつ」でも野菜を買う。産地での買い物を楽しんで帰宅した。
